小児期に体験する逆境を逆境的小児期体験(Adverse childhood Experiences :ACEs)と言います。
ACEsは様々な子供時代の逆境が身体疾患、精神疾患と関係していることを示しており、該当した人全てが同じ影響を受けるというわけではありませんが、強い相関関係にあるリスク要因と考えられています。
<ACEs項目>
1 精神的虐待(周期的)
2 身体的虐待(周期的)
3 性的虐待(接触)
4 身体的ネグレクト
5 情緒的ネグレクト
6 家庭内に薬物乱用者がいた(アルコールやドラッグの問題)
7 家庭内に心の病を抱えた人がいた(精神疾患、自殺未遂)
8 母親が乱暴に扱われた
9 親の離婚、または別居
10 家庭内に犯罪行為を起こした人がいる
各項目はそれぞれ1ポイントとしてカウントされ、満点は10点となります。
ACEスコア1の人は67%、ACEスコア4以上の人は12.6%おり、多くの人がスコア1は該当するので誰にでも十分起きうる体験です。
ACEスコア2以上の場合は「自己免疫疾患」2倍、ACEスコア4点以上の場合は「心疾患や癌」2倍、「慢性閉塞性肺疾患(COPD)」3.5倍、「自己免疫疾患による入院」2倍、「肥満」2倍、「喫煙」2倍、「うつ病」4.5倍、「アルコール依存」5.5倍、「学習や行動上の問題」32.6倍、「自殺企図」12倍など様々なリスクが上がります。さらに、ACEスコア6以上になると「肺がん」3倍、「虚血性心疾患」3.5倍、「自殺企図」30倍などといったようにリスクが高まります。
ACEsで共通しているのは「危機が予測できない状況下での慢性的なストレス」です。
脳はあらゆる脅威を同じように処理するため、脅威に曝され続けると脳の扁桃体が活発に働き、身体はコルチゾールやアドレナリン、ノルアドレナリンといったストレスホルモンを産生します。慢性的にこの状態が続くと神経レベルで変化がみられ、免疫系にも影響がみられるようになると考えられています。
ACEsによる調節不全のストレス反応を改善するものとして大事なものが、睡眠、精神衛生、健全な関係性、運動、栄養です。ストレスの緩衝材となる大人の存在や、規則正しい生活習慣や運動習慣などが改善に強い働きを持つと言われています。
成人後もACEsのトラウマがメンタルヘルスに影響を与えているケースは多々みられ、EMDRなどのトラウマケアカウンセリングが改善に役立ちます。
【参考文献 】
Dona Jackson Nakagawa (2018). 小児期トラウマがもたらす病-ACEの実態と対策. バンローリング株式会社.
Nadine Burke Harris (2019). 小児期トラウマと闘うツール-進化・浸透するACE対策. バンローリング株式会社.
西大輔・臼田謙太郎 (2017). トラウマティック・ストレスとレジリエンス. トラウマティック・ストレス. 15, (2), 51-57.
2020年9月19日 更新
※このページは随時更新します
Comments