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強迫症/強迫性障害

  • 執筆者の写真: 如月心理相談室
    如月心理相談室
  • 12月3日
  • 読了時間: 5分
強迫症/強迫性障害

強迫症/強迫性障害(Obsessive Compulsive Disorder:OCD)とは

強迫観念と強迫行為(儀式)を繰り返すことにより、日常生活に支障を来している状態のことです。

強迫観念とは、自分の意思とは無関係に頭に浮かび、苦痛を伴う不合理な思考やイメージのことです。 強迫行為とは、強迫観念により生じる不安を打ち消そうとするための行為のことを指します。


例えば、手を洗った後でも「自分の手は汚れているからもっと洗わなければ…」(強迫観念)という考えが浮かび、何度も手を洗う(強迫行動)というようなことが起こります。

このような強迫観念や強迫行動は、やる必要がないと分かっていても自分の意思でコントロールすることが難しく、多くの時間を費やし苦痛に感じることが特徴です。


強迫性障害の診断基準

世界的に使われているアメリカ精神医学会の診断分類操作的診断分類(『精神疾患の診断・統計マニュアル第5版 DSM-5』)では、「強迫症および関連症群(Obsessive-Compulsive and Related Disorders)」 と分類されており、下記のとおり診断基準が定められています。


・強迫観念、強迫行為のいずれか、または両方があり、それにより生活に支障が生じている

・強迫観念や強迫行為が1日1時間以上みられるか、苦痛を引き起こしている

・物質(薬物、医薬品など)や他の身体疾患の影響ではない

・他の精神疾患で説明されない


強迫症/強迫性障害のタイプ

・洗浄強迫

汚れを排除しなければという不潔恐怖や、自分についた汚れが家族や大切な人に広がり危害を与えるのではないかという加害恐怖などにより、必要以上に手や体を洗ったり、消毒したりします。また、汚したくない「聖域」(自分の部屋やベッド、記憶やイメージなど)があります。


・確認強迫

鍵を閉めたかどうか、電源を切ったかどうか何度も確認に戻る、仕事で書類のミスがないか何度も確認するなど、必要以上に確認行為を繰り返します。


・計画強迫

計画通りに進めることにこだわり、計画外のことが苦手です。完璧な計画を立てようとしますが、計画通りに行かないと始める前にあきらめてしまうか、最初からやり直します。


・順序強迫

物の並べ方や置き方、仕事や身支度の順序が自分の中で決められており、順番通りにいかないと不快に感じます。また、物事が自分の決めたように整頓されていないと気が済まないというようなことがあります。周りが困っていても、本人は苦痛に感じていない場合もあります。


・縁起強迫

こうしなければ悪いことが起きる、縁起が悪いという考えに支配され、行動が制限されます。例えば、右足から歩き出さないと不吉なことが起こるという考えにとらわれ、左足から歩き出してしまったら戻ってやり直します。また、幸運を呼ぶと信じている言葉を頭の中で繰り返し唱えることなどがあります。


・謝罪強迫/懺悔強迫

謝罪強迫の場合、相手が覚えていないような些細なことについて繰り返し謝罪します。懺悔強迫の場合、悪い考えや行動を告白して、相手に保証してもらう(「大丈夫だよ」など)ことで安心感を得ようとします。


・ためこみ症

物を捨てたときの後悔や失うことへの恐怖から、不要なものでも捨てることが苦痛を感じ、物をためこんでしまいます。物だけでなく、情報収集も含まれ、スマートフォンのデータが一杯になっても不要なものを削除することができないという場合もあります。


・醜形恐怖症

自分の容姿の一部について、実際以上に醜さや欠陥があると考え、苦痛や不安を感じます。鏡をみて 1 日に何度も確認してしまう、マスクや服で隠そうとする、整形を繰り返すことなどがあります。


・皮膚むしり症/抜毛症/爪噛み症

特定の場所を傷がつくまでむしることをやめられない状態です。ささくれや皮膚を傷がつくまでかきむしる癖があることを皮膚むしり症、髪の毛やまつ毛などの体毛を抜く癖がついていることを抜毛症といいます。また、爪が伸びると噛んでしまう癖があることを爪噛み症といいます。


原因

原因は1つではなく、遺伝や環境、個人の性格など様々な要素が合わさり発症します。誰しも発症する可能性があります。


・遺伝的要因

家族に強迫症の人がいる、心配性やこだわりを持つ親がいる場合、発症することがあります。


・環境的要因

ライフイベント(入学、就職、結婚など)による環境の変化がきっかけとなる場合や、ミスが許されない状況に置かれることで発症することがあります。


・個人的要因

完璧主義、神経質、心配性、責任感強い性格である人などが発症しやすいとされています。


治療

・薬物療法

SSRI などの服薬により、セロトニンの働きを強化し、不快感を軽減することができます。薬だけで改善することは難しく、行動療法を併用するとより効果的です。


・認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy:CBT)

認知行動療法は、思考(認知)、感情、行動の相互関係に着目し、生活や気持ちに支障がみられる思考や行動、精神症状を緩和していく心理療法です。ホームワークを通じて、適応的な行動や客観的な考え方を身につけます。うつ病、不安障害、強迫性障害など、多くのエビデンスが蓄積されたアプローチです。


・暴露反応妨害法(exposure and response prevention:ERP)

認知行動療法の一種です。強迫観念が生じても、強迫行動を取らずに、不安や恐怖を感じる状況をあえて体験すること(暴露)で、不快感や不安に耐えられるように慣れていく方法です。


・マインドフルネス

今その瞬間に集中することで、強迫的な考えを妨害する方法です。 例えば、自分の手は汚いという強迫観念が浮かびそうになったときに、今目の前にある風景や音、感覚をただ観察します。他にも、音楽を聴いて全ての音に注意を向けるなど様々な方法があります。


参考文献

・原井宏明・松浦文香,(2023),強迫症/強迫性障害(OCD)考え・行動のくり返しから抜け出す,講談社

・原井宏明・岡嶋美代,(2022),図解優しくわかる強迫症,ナツメ社

・石川亮太郎・小堀修・中川彰子・清水栄司,(2013),強迫性障害に対する行動実験を用いた認知行動療法,不安障害研究,5(1), p54-p60

・松永寿人,(2011),長期にわたって強迫性障害をもつ人の「自分」と病気の捉え方 インタビューからの現象学的質的研究,精神経誌,113巻10号,p985-p991

・野間利昌,(2024),強迫症/強迫性障害をワークで治す本,大和出版

・髙橋三郎・大野祐(監訳)染矢俊幸・神庭重信・尾崎紀夫・三村將・村井俊哉(訳)(2014).DSM-Ⅴ精神疾患の分類と診断の手引,医学書院




2025年12月3日

如月心理相談室 桜木町分室

葛籠貫未来(臨床心理士・公認心理師)


​Since 2020.02.01

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