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うつ病

  • 執筆者の写真: 如月心理相談室
    如月心理相談室
  • 7月6日
  • 読了時間: 6分

更新日:7月8日

うつ病の特徴|如月心理相談室

抑うつ状態とは

うつ病とは、気分が落ち込む、やる気が出ないといった精神症状や、不眠、疲労感などの身体症状により、日常生活に支障が出る精神疾患のひとつです。

診断基準を満たしていない場合でも、抑うつ状態になると様々な身体症状や精神症状が表れます。身体症状としては、主に下記のような症状がみられます。


  • 睡眠が上手くとれない

    なかなか眠れない、途中で目が覚めてしまう、眠りが浅くなるなど、睡眠に障害が出始めます。反対に、眠りすぎてしまうことや、寝ても日中も眠いと感じる場合もあります。


  • 食欲の減少や増加

    食欲の低下により食べる量が減り、体重が減少します。または、食欲旺盛になり食べる量が増えることで、体重が増加する場合もあります。


  • 疲労感、倦怠感

    身体が重たく動かない、いつもなら負担にならないことでもすぐに疲れてしまうなど、疲労感や倦怠感が強くなります。


  • 他にも、腹痛や下痢、便秘などの消化器症状、喉の渇き、喉のつまり感、息苦しさなど様々な症状が表れることがあります。


身体の不調に加えて、主に下記のような精神症状が表れます。


  • 気分の落ち込み

    悲しい、憂鬱な気分が続くことが多いです。一方で、感情が動かないように感じる人もいます。


  • 気力がなく、やる気が出ない

    仕事や勉強に身が入らない、家事や身支度することが億劫になる、Lineやメールの返信がなかなか返せないなど、生活の中で支障が出ることがあります。


  • 集中力の低下、決断ができない

    仕事の内容が頭に入ってこない、食事を何にするか決めることができないなど、集中して何かに取り組むことや、生活の中の何気ない選択・判断が難しくなります。


  • 興味関心がなくなる

    趣味など今まで楽しかったことが楽しめない、新しいことに興味を持てなくなることがあります。


  • 自殺念慮、自殺企図

    生きている意味を感じられない、死にたい、消えたいと思うようになります。また、死ぬ方法について具体的に考えることもあります。



うつ病(大うつ病性障害)の診断基準

世界的に使われているアメリカ精神医学会の診断分類操作的診断分類(『精神疾患の診断・統計マニュアル第5版 DSM-5』)において、大うつ病性障害の診断基準が定められています。

以下の9つの症状のうち、5つ以上が2週間の間にほとんど毎日、1日中存在しており、主要症状である 1.抑うつ気分、もしくは 2.興味や喜びの著しい喪失のいずれか一つを含んでいる場合にうつ病(大うつ病性障害)と診断されます。


  1. 抑うつ気分

    憂鬱になる、気持ちが沈む、悲しくなる。


  2. 興味や喜びの著しい喪失

    今まで楽しめたことが楽しめない、何も感じない(感情の枯渇)。


  3. 食欲の減退または増加

    食欲不振、または食べ過ぎてしまうことにより、体重の増減がみられる。


  4. 睡眠障害(不眠または睡眠過多)

    眠れない、またはたくさん寝すぎてしまう。


  5. 精神運動の障害(強い焦燥感・運動の制止)※他の人からみて分かるもの

    焦りを感じる、落ち着きがなくなる、動くこと(入浴や着替えなど)が億劫になる。


  6. 疲れやすさ・気力の減退

    すぐに疲れてしまう、物事への意欲がなくなる。


  7. 無価値観・不適切な強い罪責感

    自分には能力や価値がないと感じるなど、自己評価の極端な低下がみられる。


  8. 思考力や集中力の低下

    思考が止まり何もアイディアが浮かばない、些細なことでも決断に時間がかかる。


  9. 希死念慮

    死んでしまいたいと思うことがある。


簡易抑うつ症状尺度(QIDS -J)を使うと、うつ病の重症度を評価することができます。QIDS -Jは6項目の自己記入式の評価尺度であり、 DSM-IVの診断基準に対応しています。

厚生労働省のホームページからQIDS -Jを無料でダウンロードできます。


医学的診断を受けたい場合は、精神科や診療内科などの精神医療機関に受診し、主治医の判断のもと診断を受けることができます。最初の受診にあたって心配がある場合は、普段通っている病院で一度相談してみると良いでしょう。紹介状を書いてもらえる場合もあります。



うつ病の背景とケア

うつ病は様々な要因が背景にあって、複数の要因が影響して生じる精神疾患として考えられています。代表的な要因としては以下のようなものが挙げられます。


  • 脳内の神経伝達物質の乱れ(モノアミン仮説)

    私たちの脳内では、セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンという神経伝達物質が放出されており、この3つを総称してモノアミンと呼びます。モノアミン仮説では、モノアミンが減少することでうつ病が生じると考えられています。

    セロトニンが減少すると、衝動を抑制するなど感情を調整することが難しくなり、不安やイライラ、希死念慮が強くなります。ドーパミンやノルアドレナリンが減少すると、気分の落ち込みがみられ、喜び、意欲の低下につながります。


  • 遺伝的要因

    家族にうつ病を患った人がいる場合、発症率が上昇する傾向にあります。


  • ライフイベント

    引っ越し、入学、就職、結婚、離婚、出産、大切な人の死、更年期など、生活上の出来事や環境の変化がストレスとなり、うつ病が生じることがあります。


うつ病をケアしていくために、薬物療法や休養、カウンセリングがあります。


  • 薬の服用(薬物療法)

    精神医療機関に受診して医師から薬を処方してもらいます。様々な薬や効用があるため、主治医の指示のもと服用していくことが大切です。


  • 休養する

    何もせずに休む、たくさん眠ることで、心のエネルギーを回復する必要があります。うつ病の回復期間には個人差がありますが、大体約3カ月~6カ月程と言われています。また、うつ病で休職した場合、医師が休養を勧めている間はゆっくり休むことが大切です。


  • カウンセリングを受ける

    症状や問題をカウンセラーと一緒に話し合っていきます。重度のうつ状態だとカウンセリングをすることが難しく、症状が強く出ている段階では薬物療法を行い、落ち着いてきたらカウンセリングを併用するというケースが多いです。精神医療機関では認知行動療法の一部が保険適用になっています。



参考文献

荒井稔 (2005). うつ病の診断と治療,順天堂医学. 51, p386-391.

広瀬徹也 (2011). うつ病の予防,こころの健康. 26, (2), p31-39.

厚生労働省 (2009). うつ病チェック, うつ病の認知療法・認知行動療法マニュアル(平成21年度厚生労働省こころの健康科学研究事業「精神療法の実施方法と有効性に関する研究」) https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/kokoro/dl/02.pdf

野村総一郎 (2018). 新版入門うつ病のことがよくわかる本. 講談社.

大森哲郎 (2024). 本人・家族のための精神医学ハンドブックこころの病気のやさしい教科書. 日本評論社.

髙橋三郎・大野祐(監訳)染矢俊幸・神庭重信・尾崎紀夫・三村將・村井俊哉(訳) (2014). DSM-Ⅴ精神疾患の分類と診断の手引. 医学書院.

坪井康次 (2021). 改訂版うつ病患者のための最新医学. 高橋書店.




2025年7月6日            

如月心理相談室 桜木町分室      

葛籠貫 未来(臨床心理士・公認心理師)

​Since 2020.02.01

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