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  • 執筆者の写真如月心理相談室

自律訓練法

更新日:2023年2月28日

自律訓練法(Autogenic Training)とは、リラクセーション法の1つです。

交感神経が優位に働いている状態から、副交感神経が優位に働いている状態に移行することによってリラックスするのに役立ちます。

現在、医療現場や産業現場、教育現場など、様々な場面で用いられている方法です。

人には自律神経系という神経系が備わっています。自律神経系には交感神経と副交感神経があり、それぞれ異なる働きをしています。

交感神経は興奮や抑揚、副交感神経は沈静活動の働きを持ち、活動的な時は交感神経が、落ち着いている時は副交感神経が強く働いています。

そのため、副交感神経を優位にする自律訓練法をすると、以下の効果が期待されます。



自律訓練法の効果


・蓄積された疲労の回復が得られる。
・イライラせず、穏やかになる。
・自己統制力が増し、衝動的な行動が少なくなる。
・仕事や勉強の能率が上がる。
・身体的な痛みや精神的な苦痛が緩和される。
・内省力がつき、自己向上性が増す。 など

自律訓練法には背景公式と標準練習(第一公式~第六公式)までありますが、すべて出来なくても大丈夫です。標準練習の第一公式と第二公式までできれば十分に副交感神経が働きます。

最初は難しい場合もありますが、繰り返し練習すればできるようになり、かかる時間も短くなっていきます。



自律訓練法のやり方


背景公式(安静練習)

 「気持ちが(とても)落ち着いている」と頭の中で繰り返し言う。


第一公式(重感練習)

「右手が重たい」「右腕が重たい」「左手が重たい」「左腕が重たい」「両腕が重たい」「右足が重たい」「右足の腿(もも)が重たい」「左足が重たい」「左足の腿が重たい」「両足が重たい」「両腕両足が重たい」と順々に頭の中でゆっくり繰り返し、ぼんやりとした注意をその身体の箇所に向けて身体の重さを感じる。

筋肉がリラックスすると身体の重さを感じ取れるようになります。


第二公式(温感練習)

「右手が温かい」「右腕が温かい」「左手が温かい」「左腕が温かい」「両腕が温かい」「右足が温かい」「右足の腿が温かい」「左足が温かい」「左足の腿が温かい」「両足が温かい」「両腕両足が温かい」と順々に頭の中でゆっくり繰り返し、ぼんやりとした注意をその身体の箇所に向けて身体の温度を感じる。

「温かい」というのは、筋肉のリラックスによってその部位の小血管が拡張して血液の流れが増加した時に生じる感覚で、その感覚を確認していきます。

※不快感を伴った場合、頭の中で繰り返す言葉を変えたり、練習を切り上げましょう。


第三公式(心臓調整)

意識を両腕両脚から左胸へ移す(最初のうちは胸に手を置いてもよい)。「心臓が静かに規則正しく打っている」と頭の中で繰り返す。

※最初のうちは仰向けで横になる姿勢で行います。心臓に病気がある方は第三公式を行わず、第四公式へ進みます。


第四公式(呼吸調整)

「楽に呼吸をしている」あるいは「呼吸が楽だ」と頭の中で繰り返し、自然な呼吸に任

せる。

※呼吸器系の病気がある方は行なわず、第五公式へ進みます。


第五公式(腹部温感練習)

右手をみぞおちの真下に置き、「お腹が温かい」と頭の中で繰り返す。

※最初のうちは仰向けで横になる姿勢で行い、不快感が生じたら練習を切り上げます。糖尿病、腹部症状がある人は一人ではなく専門家と相談して行いましょう。


第六公式(額涼感練習)

意識を額(ひたい)に移し、「額がここちよく涼しい」と頭の中で繰り返す。

※頭部に症状(片頭痛など)がある方、脳波に異常がみられる方は実施を控えます。



1回の練習時間は5分程度でよいので、毎日2~3回取り組めると望ましいです。


気持ちを落ち着けようと努力すると自然と緊張が起きるので、反ってリラックスできません。そのため、自律訓練法を行う時は「受動的注意集中」を意識するとよいです。受動的注意集中とは、気持ちを落ち着かせようとさせるのではなく、気持ちが落ち着いていることを意識することをいいます。

また、イメージを利用するとやりやすくなることがあります。例えば、第二公式で入浴しているイメージをしたり、第六公式で爽やかな草原にいるイメージをしたりすると取り組みやすくなります。


自律訓練法実施後には適度に交感神経が働くように、消去動作という取り消し動作を行ってください。


消去動作

 目を閉じる。両手を握り、少し力を入れて5、6回強く曲げ伸ばしをする。大きく背伸びするように2、3度深呼吸する。目を開ける。



自律訓練法の適用範囲


年齢は9歳以上であれば年齢の上限なく適用できます。


健康増進作用があるので、どのような人にも適用できます。

特に不安、緊張、恐怖などを主な症状とする神経症、心理的ストレスが強く影響している心身症(例:気管支喘息、本態性高血圧、心臓神経症、片頭痛、胃・十二指腸潰瘍、過敏性大腸症候群、筋痛症、甲状線機能亢進症、神経性食欲不振症、チック、書痙、どもり、月経障害、婦人自律神経症、過敏性膀胱、夜尿症など)は効果的と言われています。

ただし、身体疾患がある場合、病気によっては実施が不適切であったり、実施の仕方を変えなければならないので、専門家に相談が必要です。



リラックスしやすい環境作り


自律訓練法を行なう前にいくつか準備をすると取り組みやすくなります。

慣れてくれば準備をしっかりしなくてもできますが、最初の頃は準備を整えた方がよいでしょう。

外部刺激を少なくする。

 ・目を閉じる。

 ・物音が少なくて圧迫感がない、適温の部屋を用意する。

 ・身体を締めつける物を取り除く、弛める(ネクタイ、腕時計等をはずす等)。


内部刺激を少なくする。

 ・食事を摂っておく。

 ・排便、排尿をしておく。

 ・その日のうちにやらなくてはならないことはやっておく。


リラックスしやすい姿勢作り 1(仰臥位)

 ベッドや布団で仰向けで横になる姿勢。

 ・自分に合った高さの枕を首までかけるようにする。

 ・両腕を体から少し離して両脇に置き、指・手首・肘の関節部分は心持ち曲がり気味にする。

 ・両足はやや開き気味にし、足先は扇形に開いた位置をとる。


リラックスしやすい姿勢作り 2(安楽椅子姿勢)

 背もたれのあるソファや椅子に腰掛ける姿勢。

 ・背もたれによりかかり、足の裏全体が床に着くようにする。

 ・両腕を肘掛に置き、手首のところから少し外して内側に垂れ下げる。


リラックスしやすい姿勢作り 3(単純椅子姿勢)

 もたれかかりのない椅子に腰掛ける姿勢。

 ・椅子に深く腰掛け、足の裏全体が床に着くようにする。

 ・首と背骨を垂直に伸ばし、大きく息を吸い込んだ後に吐き出し全身の力を抜く。

 ・足をやや開き、手を太腿にのせ、手首から先を太腿の内側に垂らすようにする。



副交感神経は身体を休め、穏やかに過ごすために必要なものです。

中には交感神経優位な状態で生活している自分に気づかない時もあります。

自律訓練法を練習して、こまめに日々の生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。



【引用文献・参考文献】

佐々木雄二 (2006). 自律訓練法の実際 ー心身の健康のためにー . 創元社.



2020年5月8日更新

※このページは随時されます。

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