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ブレインスポッティング(Brainspotting; BSP)

  • 執筆者の写真: 如月心理相談室
    如月心理相談室
  • 4月10日
  • 読了時間: 4分

ブレインスポッティング(如月心理相談室)

ブレインスポッティング(Brainspotting; BSP)とは、神経系と感情体験に関連した目の位置を用いることにより、ストレスやトラウマをケアする心理療法です。


ブレインスポッティングの発展

ブレインスポッティングは、David Grand博士のカウンセリングの中で発見され、2003年に開発されました。

当時、EMDR(Eye Movement Desensitization and Reprocessing:眼球運動による脱感作と再処理法)やソマティック・エクスペリエンシング(Somatic Experiencing®; SE™)、マイクロムーブメント、対人関係、洞察志向の心理療法に基づいたセラピーを行っていたDavid Grand博士は、あるクライエントとのセッションで、EMDRのように左右に眼球運動を促す際、眼球が振動する(マイクロサッケード)視点を見つけました。

そしてそこで視点を止めて、10分間そのままでいると、苦痛を伴う一連の記憶が浮かび、早く深いレベルでトラウマがケアされていく様がみられたことがブレインスポッティングを発見したきっかけとなりました。現在ではトラウマをケアするだけでなく、本来その人が持っている創造性を発揮できるようにしていくことにも使われています。

様々なブレインスポッティングの方法が開発、研究されながら、南米、欧州、豪州、アジアや日本に広がり、現在では世界中で10,000人以上のセラピストがブレインスポッティングを学んでいます。日本では2014年から普及し、ブレインスポッティング・トレーニング・インスティチュート日本(BTI-J)が対人援助職の専門家を対象にして公式トレーニングを提供しています。


ブレインスポッティングの背景

ブレインスポッティングは、「どこを見るかで感じ方が変わる」と表現するように、目の視点が特定の神経活動や内定経験と関連しているという仮説に基づいています。

ブレインスポットと呼ばれる特定の位置に視点を置くことで、トラウマ記憶を保存している脳深部にアクセスし、私達が本来持っている自己治癒力や創造性が発揮され、トラウマがケアされていきます。

具体的には、ブレインスポットに視点を置くことで脳の皮質下が活性化して、同時に身体と感情体験を抑制する無顆粒層を含む新皮質の活性化が起き、高い活性化状態において身体が抑制機能を働かせることでトラウマが処理されていくと考えられています。

ブレインスポット イラスト(如月心理相談室)

ブレインスポッティングのセッション

ブレインスポッティングのセッションでは、現象学、不確定性原理に基づいて、セラピストが分析や予測をしない態度をとりながら行うことが推奨されています。

これは、脳は1億2500万もの神経細胞が相互に電気信号でやりとりしていて脳に起こり得ることは知ることができないこと、実際のセッションでは度々セラピストが予測していないことが起こること等に基づいていて、セラピストがクライエントを分析したり、予測することがセッションでの同調や脳の処理を却って妨げることに繋がると考えられているからです。

そのため、セラピストはクライエントの内的プロセスについていくように求められます。


セッションの具体的な進め方は、クライエントにある記憶や体験、問題等を思い浮かべてもらい、その時の身体感覚を感じてもらいながら、特定の位置に視点を置きます。

視点を決める時には、セットアップと呼ばれるいくつかの方法を使います。セットアップには様々あり、アウトサイドウィンドウBSP、インサイドウィンドウBSP、ゲイズスポッティング、リソースモデルのBSP、ワンアイBSP、Z軸BSP、ローリングBSP等、その方の状態や反応に合わせて選び、クライエントが抱えられる程度の感情や身体感覚の範囲で留まりながら一点を見つめてもらいます。

また、視点に加えて、バイオラテラルサウンドというリラクセーション音楽や自然音が左右交互に聞こえる音声の両側性刺激を使うことにより、より効果的にケアを進めていきます。

バイオラテラルサウンド(如月心理相談室)

<バイオラテラルサウンド>


セッション中は二重同調フレームと呼ばれる、セラピストとクライエントの関係性の同調、ブレインスポットによる神経生物学的な同調の両方がなされることでケアが進んでいくと考えられており、セラピストとクライエントの2人でセッションを行うことが前提となっています。

ですが、一人で抱えられる程度の日常生活上のストレスであればセルフケアとして自分で使用することもでき、セルフケアのためのブレインスポッティングの書籍も販売されていますので、関心のある方はご参照ください。


鈴木孝信 (2022). 一点をボーッと見るだけ!脳からトラウマを消す技術. 講談社


参考文献

Alan Gordberg & David Grand (2016). 最高のパフォーマンスを実現する! ブレインスポッティング・スポーツワーク ~トラウマ克服の心理療法~. BAB JAPAN.

ブレインスポッティング・トレーニング・インスティチュート日本(BTI-J) http://btij.org/

David Grand (2016). BRAINSPOTTING Phase One Training Manual. ブレインスポッティング・トレーニング・インスティチュート日本.

David Grand (2017). ブレインスポッティング入門. 星和書店.

鈴木孝信 (2022). 一点をボーッと見るだけ!脳からトラウマを消す技術. 講談社




2025年4月10日

如月心理相談室 代表 深谷 篤史

(臨床心理士・公認心理師・認定専門公認心理師®・EMDR臨床家資格・SE™プラクティショナー)

​Since 2020.02.01

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